8月の言葉

学ぶことの少ない人は 牛のように老いる
かれの肉は増えるが かれの知慧は増えない

解説

今月は『法句経』の「老いること」という章から聖句を選びました。
人は誰しも老いていきます。現代では「アンチエイジング」という名のもと、いささかの抵抗手段はあるようですが、根本的なところでは老いに逆らうことはできず、結果として、みな死んでいきます。
仏教では生老病死という四つを人生の苦しみとして位置づけます。間違ってはいけないのが、これら四つはそれ自体が悪ではありません。我々がこれら四つについて「正しく知らない・認識していない」ため、自らの思い通りにできないと感じ、苦しむのです。それゆえ、仏教では老いや死から目を背けることをよしとしません。
上記の聖句に先立って、人間の肉体は、他の物質が朽ちていくのと同様に、老いによって衰えていくことを明示しています。そして、釈尊は肉体が衰えていっても、学ぶことによって知識・智慧の蓄積をしていくことを求めました。ただ単に老いた人は「空しく老いぼれた人」と辛辣な表現さえすることがあります。他の箇所では、年老いた人には「誠あり、徳あり、慈しみがあって、傷わず、つつしみあり、みずからととのえ、汚れを除き、気をつける」ことが望まれています。
このような徳性を備えている人だからこそ、年をとっても敬うべきであるし、実際に敬われたのでしょう。人生を歩む上で、いつまでも心に留めておきたい教えだと思います。