7月の言葉

荒々しいことばを言うな 言われた人々は汝に言い返すであろう
怒りを含んだことばは苦痛である 報復が汝の身に至るであろう

中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』より

解説

今月は『法句経』の「暴力」という章から聖句を選びました。
「暴力」という語を見ると、無意識的に身体に危害を及ぼす行為などを想像してしまいがちですが、荒々しいことばも「ことばの暴力」と言えるでしょう。
直接相手に対峙して荒々しいことば(暴言)を放つには、怒りやそれなりの覚悟がともないます。この場合、対立関係となりやすいのは容易に想像がつきます。
一方で、SNSの普及・利用者数の増加にともなって、ネット上での誹謗中傷が社会問題化しています。ネット上では相手と対面せず、しかも匿名で発言できるため、安易な誹謗中傷が惹起しやすいとも言われます。ネット上の誹謗中傷に対して、泣き寝入りする時期が長くありましたが、近年では状況が変わって、プロバイダーやSNS管理者に誹謗中傷の発信者情報の開示請求を行って、法的責任を問うことが増えてきました。ただこれらの行為は「報復」だとは思いません。誹謗中傷の責任をとらされているだけです。
一般的に誹謗中傷する人は悪意もしくは歪んだ正義感をもって実行している場合が多いと聞きます。味方もいるかもしれませんが、それ以上に敵も多くなるのでしょう。そうなると、争いの絶えない状況に陥るのではないでしょうか。
人間は多くの人と関わりあいながら生きていきます。現実であれ、ネット上であれ、殺伐とした環境で過ごす人々に心の安らぎが訪れるべくもありません。