5月の言葉
善をなすのを急げ 悪から心を退けよ
中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』より
善をなすのにのろのろしたら 心は悪事をたのしむ
解説
今月は、これまでに紹介してきた中でも特に短い句を取り上げます。
上記の聖句では「善」と「悪」について明確な説明はありませんが、おそらく道徳的なことを意味していると思われます。しかし、それでは分かりづらいかもしれませんので、引用元の『法句経』からではありませんが、善悪について説かれている箇所を参照しながら、説明を進めていくことにします。
「善」の代表的なものとして「十善」(じゅうぜん)があります。すなわち、(1)殺さず・(2)盗まず・(3)邪淫(道を外れた淫事)せず・(4)妄語(嘘をつくこと)せず・(5)綺語(飾り立てた言葉)せず・(6)悪口(荒々しい言葉)せず・(7)両舌(人を悪くいう言葉)せず・(8)貪らず・(9)瞋らず・(10)邪見をいだかず、の十種のことです。そして「悪」とは、この十善の反対であると説明しています。普段聞きなれない言葉も使われていますが、最初の七つは他者への振る舞いが説かれ、最後の三つは自分自身について触れられます。
かつてここで書いたことがありますが、人は漫然と過ごしていたのでは貪りなどの煩悩に振り回されて悪いことを行ってしまいます。積極的に「悪」を離れて「善」なる行いをすることで、その人にとって不快ではなく快なる結果がもたらされます。それが引いては、心乱れない状況や環境を作り出し、穏やかな生活を送ることができてくるはずです。