11月の言葉

愚人とともに歩む人は 長い道のりにわたって憂いがある
愚人と共に住むのは つねにつらいことである

中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』

 実は、上記の聖句に先立って「もろもろの聖者に会うのは善いことである。かれらと共に住むのはつねに楽しい。愚かなる者どもに会わないならば、心はつねに楽しいであろう」とも説かれています。ここでは、明らかな智慧があって立派な人と付きあうことが推奨され、その反対に愚人との付き合いには否定的に描かれています。

 意外かもしれませんが、経典では付き合うべき人と付きあうべきでない人を意識するよう説かれます。たとえば「悪い友と交わるな。卑しい人と交わるな。善い友と交われ。尊い人と交われ」といった具合です。

 では、なぜこのように愚人(悪友)と親しまず、聖者(善友)と付き合うことが説かれるのでしょうか。それは、ひとは周囲の人々の考えや行動に影響されるからです。正しい智慧を備えていれば適切な判断を下せますが、その智慧を持ち合わせていなければ、往々にして判断を誤ります。もし智慧を備えていない時に悪友に囲まれていたならば、悪い影響を受けてさらに状況を悪化させかねません。その反対に、善友に囲まれていたならば、周囲から良い影響を受けて状況改善へ繋げていくことができるでしょう。

心穏やかに過ごせるよう精進することは必要ですが、それと同時に自身の環境、つまり良好な人間関係を築くことも意識しておかなければならないと言うことでしょう。