10月の言葉

たとえ貨幣の雨を降らすとも 欲望の満足されることはない
「快楽の味は短くて苦痛である」と知るのが賢者である

中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』

解説

今月は『法句経』の「ブッダ」という章から聖句を選びました。

「ブッダ」(Buddha)とは「覚った(人)」という意味で、一般的にはゴータマ・シッダッタ、いわゆるお釈迦さまを指す言葉として使われています。

しかし、インドの古いお経を見てみると、この「ブッダ」の複数形が用いられている箇所が散見され、決してお釈迦さまのみを意味する単語ではないことがわかります。すなわち、お釈迦さま以外にも覚った人が複数いたということです。ここで「賢者」と表現されている人は、つまりのところ、「ブッダ」=(真理を)覚った人を意味すると考えてよいでしょう。

少し前置きが長くなりましたが、上記の聖句では欲望について説かれています。仏教は「人間はその根底に欲望があり、その欲望を叶えようとする。その欲望が叶えば良いが、叶わなければ悩み苦しむ」ことを見抜いていました。聖句ではさらに欲望を考察して、欲望とは一時的には満たされることはあっても、すぐに満たされなくなるので苦痛であることを指摘してくれているのです。

これまでにも何回か書いてきましたが、仏教では欲望を制して心を安定させることを重視します。そのためには、善なる行いの実践が不可欠です。拙寺に限らず、お寺で法話を聞いたり、心をコントロールするための座禅などを体験してみてはいかがでしょうか。