2023年正月の言葉

心は、捉えがたく、軽々とざわめき欲するがままにおもむく
その心をおさめることは善いことである
心をおさめたならば、安楽をもたらす

中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』より

解説

明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
さて、みなさんはご自身の「心」をどのようにお考えでしょうか。心は自分のものであるから、完全に制御(コントロール)できるものと考える方もおられるのではないでしょうか。
ただ、本当に普通の人間が心というものを完全に制御できているでしょうか。
例えば「欲求に負けて食べることを止めていた物を口にする」ことや「早くしなければならないことがあるのに、気分が乗らないから、行動に移すことができない」といったことは、大抵の人が一度や二度は経験があるのではないでしょうか。もちろん、心を制御できているときはあるでしょうが、常時制御することはかなり困難であると思います。
仏教では、人は「心をおさめること」を怠ってしまうと、欲望によって心が侵食されていくと考えています。ここでは直接言及されていませんが、心をおさめることを実践し制御することで、貪りや怒り、嫉みといった余計な感情(煩悩)を生じさせず、心乱れない状態を作り出せると言われます。すなわち、心穏やかな状態(安楽)がもたらされるのです。
自分も含めて、ほとんどの人は欲求に流されて、心が乱れがちになってしまいます。定期的にでも良いので、心の制御のために自分を律することをしていきたいものです。