令和8年10月の言葉

屋根を粗雑に葺いてある家には
雨が洩れ入るように
心を修養していないならば
情欲が心に侵入する

中村元訳『仏弟子の告白』

今月も聖句を『テーラガーター』から引用しました。

みなさんは意外に思われるかもしれませんが、同じ偈が異なる経典に収められていることは珍しいことではありません。今回取り上げた偈も同様で、しかもすでに紹介したことがあります。その時は、『法句経』に収められたものを解説しています。

普通であれば同じ偈を紹介する必要はないのですが、このことを指摘する機会はそう多くないので、前回とほぼ同内容になってしまいますが、取り上げたいと思います。

この聖句で一番注目したいのは、最後の句の「情欲」です。情欲とは「貪り」とも訳されますが、ここでは「過剰な欲求」と言い換えてもいいでしょう。仏典では「三毒」(さんどく)といって、人間の根源的な煩悩(欲望)を三つあげるのですが、この「情欲」はそのうちの一つに数えられます。

そもそも、仏教では我々人間を欲望にとらわれた存在であるとみなしています。そのため普段何も意識せず「心の修養」を怠っていると、心が欲望に侵食されてくるということです。逆に「心の修養」に勤めていれば、心に余計な感情が起こらないので、乱れることもないのです。

繰り返しになりますが、人は漫然と過ごしていたのでは貪りなどの煩悩に振り回されます。「心の修養」を行って、心乱れない状況を作り出し、穏やかな生活を送りたいものです。