令和8年7月の言葉

わたしの貪欲はすべて捨てられた

わたしの怒りはすべて根絶された

わたしの迷妄はすべて消失した

わたしは清涼となり、平安となっている

中村元訳『仏弟子の告白』

今月も『テーラガーター』から聖句を選びました。

文章自体が難しいわけではないのですが、すんなり理解できない感覚があるかもしれません。この聖句を理解にするには、仏教における重要な考え方を知っておく必要があります。それは「三毒(さんどく)」といわれるものです。これは、人間が根源的にそなえている三つの煩悩(身心をわずらわせるもの)のことをいいます。すなわち(1)「貪(とん)」(2)「瞋(じん)」(3)「痴(ち)」の三つです。それぞれの意味は、「貪」が [必要以上の]貪り、「瞋」は憎しみや怒り、「痴」が真理・道理が分からないこと(真理に対する無知)と説明されます。

あらためて聖句に立ち戻ってみると、1句目が「貪」、2句目に「瞋」、そして3句目には「痴」ついて言及され、これら三つが自分にはもう無いと告白されます。

仏教では、普段自分の心について何も意識せず、その制御を怠っていると、心は三毒などの煩悩に侵食されていくと考えます。その一方で、心を制御しようと自制・実践することにより、煩悩を生じさせず、心乱れない状態を作り出せるとします。すなわち、心穏やかな状態がもたらされるのです。上記の教えは、まさに三毒を捨て去った後に至る心の有り様を簡潔に示してくれています。

ちなみに、この三毒は「三不善根」と表現されることもあります。