令和7年10月の言葉

自分を苦しめず

また他人を害しないことばのみを語れ

これこそ実に

善く説かれたことばなのである

中村元訳『ブッダのことば』

今月は『スッタニパータ』「大なる章」の「みごとに説かれたこと」から聖句を選びました。

ご覧の通り、ここでは「ことば」について説かれています。これまでにも何度か「身口意の三業」を紹介してきましたが、その中にも「口業(くごう)」として、「ことば」が取り上げられており、仏教の「ことば」へ対する関心度の高さを伺うことができます。

さて、「ことば」には意思や情報を伝達するための道具としての側面がありますが、それゆえに、使い方次第では相手だけでなく自分をも傷つけるものにもなりえます。仏教はこのことを経験的にも認識しており、ことばに関する教えが至る所で散見されます。例えば「偽りをかたるな」、「悪口をいうな」、「荒々しいことばをつかうな」が比較的知られているものです。偽りを伝えられた人は、間違った知識を得てしまったがゆえに判断を誤ることが考えられます。また、悪口・荒々しいことばを言われた人は相手に嫌悪感や敵対心などを抱きかねません。どちらも人間関係を悪化させる可能性があり、その報いが自分に返ってくることも考えられます。

人間は多くの人と関わりあいながら生きていきます。現実であれ、ネット上であれ、殺伐とした環境で過ごす人々に心の安らぎが訪れるべくもありません。自分自身が穏やかに過ごすためにも、ことばの使い方には気をつけたいものです。