令和7年6月の言葉

自己を制して悪をなさず、若いときでも

中年でも、聖者は自己を制している

かれは他人に悩まされることなく

また何ぴとをも悩まさない

中村元訳『ブッダのことば』

今月は『スッタニパータ』「蛇の章」の「聖者」から聖句を選びました。

仏教では、我々人間を欲望にとらわれた存在であるとみなします。普段自分の心について何も意識せず、その制御を怠っていると、心は欲望に侵食されていくと考えていました。その一方で、心を制御しようと自制・実践することにより、貪りや怒り、嫉みといった余計な感情(煩悩)を生じさせず、心乱れない状態を作り出せるとします。すなわち、心穏やかな状態がもたらされるのです。仏教の修行者は、この境地を得るために修行を行ってきました。そこに年齢は関係ありません。

また、仏教には究極的に人は孤独でもあるという認識や、自らの行動の結果は自ら受ける(自業自得)原則も持ち合わせています。そのためか、自らに責任を持つのは自分であるという考えが重視されます。もちろん第三者から多分に影響を受けることはありますが、自分の心をコントロールして穏やかな気持ちで過ごすためには、自分で考え行動し、そして自らを律していくことが求められます。しかし、人間はひとりでは生きていけないので、常に他者へ思いやりや相手を尊重することにより、対立関係を生じさせることなく穏やかな環境を作り出すことを目指しました。

上記の聖句は、普段からの心持ちや社会・人との関わり方を端的に示しているように思います。