令和7年5月の言葉

立ちつつも、歩みつつも

坐しつつも、臥しつつも

眠らないでいる限りは、この慈しみの

心づかいをしっかりとたもて

中村元訳『ブッダのことば』

今月は『スッタニパータ』「蛇の章」の「慈しみ」から聖句を選びました。 

松江市の偉人である中村元先生のお墓には、「慈しみ」の部分を自ら意訳したものが刻まれているそうです。 

この「慈しみ」では「一切の生きとし生けるものは幸せであれ」と説きます。そのためには、「他人を欺いてはならない」「他人を軽んじてはならない」「他人に苦痛を与えることを望んではならない」など、特別なことではなく、当たり前なことが列挙されます。しかしながら、周囲を見回してみるとどうでしょうか。世界では紛争や経済的衝突が発生し、もちろん日本でも、自分勝手な理由で他者を傷つける事案が後を絶ちません。残念ながら、上記の列挙したことが「言うは易し、行うは難し」の状況なのです。 

では、我々はどのような心持ちであれば、より確実に「他人を傷つけない」ように行動できるでしょうか。そのために重要なものは「慈しみ」であろうと考えます。中村先生の指摘によると、「慈しみ」とは他者へ対する同情・共感・愛情を意味します。常に他者へ慈しみを抱いて相手を尊重することにより、他者だけでなく自分にとっても暮らしやすい環境を作り出し、穏やかに生きていけるものだと思います。 

その意味では、前掲の聖句は「他人を傷つけない」ための心構えを教えてくれています。