令和7年2月の言葉
あさはかな愚人どもは
自己に対して仇敵(かたき)に対するようにふるまう
悪い行ないをして
苦(にが)い果実(このみ)をむすぶ
中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』
今月は『法句経』の「愚かな人」という章から聖句を選びました。
この聖句の内容は、非常に分かりやすいように思えます。ただ、さらに理解を深めるには、いわゆる「自業自得」(じごうじとく)の考え方を知らねばなりません。
多くの方が知っているであろう四字熟語ではありますが、改めて『大辞林』の説明を見てみましょう。
〘仏〙自分のおこないの結果を自分が受けること。一般には悪い報いを受けることにいう
『大辞林』でも言及されていますが、この言葉はそもそも仏教語です。また、違う表現をするならば「善因楽果、悪因苦果」となります。善なる行為(善行)は快なる結果をもたらし、その反対に、悪なる行為(悪行)は不快な結果をもたらす、ということを意味します。いずれの表現でも良いのですが、仏教ではこの「自業自得」の原則を重視しています。
聖句に話を戻すと、愚かな人々はみずからに苦い(=不快)な結果をもたらすにも拘わらず、悪行をなしていると説いています。それをあたかも「自分に対して仇敵に対するよう」な振る舞いだとして批判的に表現している訳です。聖句では直接説かれませんが、悪行ではなく善行をなせば、自らに快なる結果をもたらすことができるのですから、積極的に善行をなして心穏やかに過ごすことを我々に勧めてくれていると読むこともできるでしょう。