令和6年10月の言葉
身にも、ことばにも、心にも 悪い事を為さず
三つのところについてつつしんでいる人
——かれをわれは<バラモン>と呼ぶ
中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』
今月は『法句経』の「バラモン」という章から聖句を選びました。
ご存知の方も多いと思いますが、バラモンとはインドのカースト制度最上位に位置する司祭者階級を指します。そして、そのバラモン(司祭者)が執行する宗教がバラモン教です。このバラモン教は、釈尊が仏教教団を開く頃には、すでに広まっていました。
さて、仏教では「身口意の三業」といわれるものがあります。すなわち「身」とは身体的行為、「口」は言語的行為(=ことば)、「意」は心に思う働きと説明されるものです。経典では、これら「身口意」による行為をつつしむことが散説されています。上記の詩句でも、「身口意の三業」のそれぞれについて悪いことをせずつつしむ、すなわち、きちんと制御(コントロール)すべきことが説かれています。
そして最後の句で「バラモンと呼ぶ」とありますが、これは単にカースト最上位であるバラモンを意味するものではありません。インドの古い仏教では、身口意の行為を通して、その人の心の貴賤を量ろうとします。生まれながらに決まってしまう階級でもって、人を判断しようとしなかったのです。
人は「身口意」による行動の制御を怠っていくと、心が煩悩に侵されていき穏やかではいられません。そればかりか、周囲の人々との間に軋轢が生じて人間関係まで損なうことが出てきます。その反対に「身口意」による行動をきちんと制御することは、自らの心を穏やかにするばかりでなく、他者へ好影響を与えることもあります。できるなら、きちんと「身口意」の行動を意識して、後者のような生活を送りたいものです。