令和6年9月の言葉
実に自己は自分の主である 自己は自分の帰趨(よるべ)である
故に自分をととのえよ —— 商人が良い馬を調教するように
中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』
今月は『法句経』の「修行僧」という章から聖句を選びました。この章は、仏教の修行僧である比丘(びく)のあり方や彼らへの教えをまとめたものと言われます。
さて、自ら思考することを停止してしまい、他人を無条件に信用することによって、その人に利用されてしまう事件が過去に発生していることはご承知の通りだと思います。
仏教では、人間はひとりでは生きていけないので、良き友人と交流することを説かれます。それとともに、究極的には人は孤独でもあるという認識や、自らの行動の結果は自ら受ける(自業自得)原則も持ち合わせています。そのためか、自らに責任を持つのは自分であるという考えが重視されます。もちろん第三者から多分に影響を受けることはありますが、自分の心をコントロールして穏やかな気持ちで過ごすためには、自分で考え行動し、そして自らを律していくことが求められます。
この詩句を読むと個人的に思い出すのが、『涅槃経』の「自灯明法灯明」と呼ばれるエピソードです。紙幅の関係上、内容説明は省きますが、このエピソードでは「自分に頼れ、他のものに頼るな」と説かれます。ここでの「自分に頼る」とは、「釈尊が説いてきた法(教え)に基づいた自分に頼る」であると指摘されることがあります。
仏教徒であれば、釈尊の教えなどを指針として、自分を律することで心穏やかな生活を送る努力をしたいものです。