令和6年5月の言葉

この心は、以前には、望むがままに 欲するがままに、快きがままに
さすらっていた。今やわたくしは その心をすっかり抑制しよう

中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』

今月は『法句経』の「象」という章から聖句を選びました。

では、なぜこの聖句が「象」の章の中にまとめられているかというと、次のような喩えが続くためです。

— 象使いが鉤(かぎ)をもって、発情期に狂う象を全くおさえつけるようにここでは象の喩えを用いつつ「欲望のままに行動するのではなく、心から湧きあがる欲望をきちんと自制すべきこと」が示されていると思われます。

そもそも、仏教では我々人間を欲望にとらわれた存在であるとみなしています。普段自分の心について何も意識せず、その制御を怠りなまけていると、心は欲望に侵食されていくと考えていました。その一方で、心を制御しようと自制・実践することにより貪りや怒り、嫉みといった余計な感情(煩悩)を生じさせず、心乱れない状態を作り出せるとします。すなわち、心穏やかな状態(安楽)がもたらされるのです。

では、その「心の制御」とはどのようにするのでしょうか。ここでは明確にされていませんが、おそらく、瞑想(座禅)や戒めの遵守などの実践を意味していると思われます。

自分も含めて、ほとんどの人は欲求に流されて、心が乱れがちになってしまいます。定期的にでも良いので、心の制御のために自分を律することをしていきたいものです。