令和6年4月の言葉

他人を苦しめることによって 自分の快楽を求める人は
怨みの絆にまつわられて 怨みから免れることができない

中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』

 今月は『法句経』の「さまざまなこと」という章から聖句を選びました。

 残念ながら、人の苦しみによって快楽を得ようとする人はいます。この教えから、それは昔であろうと現代であろうと、変わりないことが見て取れます。

 おそらく相手を苦しめる側は意識していないでしょうが、苦しめられる側は相手に怨みを募らせていき、あわよくば復讐・報復できる機会を伺っているでしょう。苦しめる・苦しめられる関係が永久に変わらなければ、苦しめる側はあまり不安や恐怖を感じずにいられるでしょうが、その関係性に少しでも変化が生じる時に、怨みに対する恐怖が出てくるのではないでしょうか。

 復讐・報復を絶えず気にかけ、常に裏切りを心配して周りの人間を信用することができなくなれば、人は心の安息を得ることは難しいでしょう。実際に身体への障害がなくとも、精神的な圧力にさらされ続けることになります。

 この負の循環を抜け出すには、相手を思いやり、害されることのない人間関係を構築していかなればなりません。

 自分が相手へ思いやりのある行動をとるのは当然ですが、相手も同じように接してくる「良友」を選んで交流することに加え、自分に害となる「悪友」から距離をとることによって、自ら積極的に良い人間関係を作り出す努力も必要でしょう。