令和6年3月の言葉

単に何かの行為をするよりは 善いことをするほうがよい

なしおわって 後で悔いがない

中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』

 今月の聖句も『法句経』から抜粋しています。聖句の前には「悪いことをするよりは、何もしないほうがよい。悪いことをすれば、後で悔いる」とも説かれています。

 非常にシンプルでありながら、納得できる教えではないでしょうか。とかく仏教の教えは難解だと思われがちですが、上記のような、理解しやすいものもあるのです。

 仏教には、「自業自得」(じごうじとく)の原則が存在します。多くの方がご存知でしょうが、その意味は「自分の行為の結果を自分で受けること」です。ただ、日本で「自業自得」というと、悪い報いを受ける場合にのみ使われる傾向がありますが、本来の意味は悪い場合だけではなく良い結果がもたらされる場合も含みます。

 似たような表現として、「因果応報」や「善因楽果、悪因苦果」(ぜんいんらっか、あくいんくか)があります。前者の意味はよく知られているので省きますが、後者の意味は「善い行為によって、心地良い結果を生じ、悪い行為によって苦しい結果が生ずる」ということです。

 いろいろな言い方があることからも見て取れるように、仏教ではこの「自らの行為の結果は自らが受ける」原則を重視しています。

 ただ、このような原則を前提としているとしても、聞いただけで聖句の内容を受け入れることができるこの聖句は、個人的にすごいと思えてしまいます。