令和6年2月の言葉

誠あり、徳あり、慈しみがあって

傷わず、つつしみあり

みずからととのえ、汚れを除き

気をつけている人こそ「長老」と呼ばれる

中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』

 今月は『法句経』の「道を実践する人」という章から聖句を選びました。

 一般的にアジアでは「年長者を敬う」傾向が顕著であると言われています。日本に住んでいる我々にとっても、なじみのある慣習ではないでしょうか。ただ最近では、年功序列のみによる評価が見直され、社会の中で年長者に対する尊敬の念は薄れつつあるようです。青壮年代との対比から高齢者の負の側面に焦点を当てられることも少なくありません。

 しかし、人は誰しも年を重ねて成長し、そして老いて死んでいきます。この現象は過去においても現代においても変わらない事実であり、誰もが歩む道とも言えます。

 およそ2500年前に活躍した釈尊もすでにこの事実を認識しており、経典でも人間の肉体は、他の物質が朽ちていくのと同様に、老いによって衰えていくと説かれています。しかし、釈尊は肉体が衰えていっても、学ぶことによって知識・智慧の蓄積をしていくことを求めました。そして、さらに釈尊は年長者には上記のような諸要素を身に付けるべきことにも言及しているのです。

 このような徳性を備えている人だからこそ、年長者として敬うべきであるし、実際に敬われたのでしょう。敬われるために生きるわけではありませんが、自らの生き方により第三者へよい影響を与えられるなら幸せなことではないでしょうか。

 人生を歩む上で、いつまでも心に留めておきたい教えだと思います。