12月の言葉
2022/11/30 17:59
12月の言葉

つとめ励むのは不死の境地である
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中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』より |
<解説>
仏教では、古くから「つとめ励む」ことを称え、「怠りなまける」ことや「怠惰」なことを諌めてきました。自分を律することができず怠惰な人は、生活をしてはいますが、特段何かをするわけではないと考えられます。その反対に、自分を律することができ「つとめ励む」人は行うべきこと・行うべきでないことを峻別して、自分の使命や務めを果たしていくくと思われます。そして「つとめ励む」ことがその人だけにとどまらず、周囲へも影響を与えていくので「不死の境地」と表現し、その実践者を「不死」と見たのでしょう。当然「怠りなまける」ことは、生きていても周囲へ波及することがほとんどなく、それを「死」、そして怠る人を「死者」のようだと表現しているのです。 先月も紹介しましたが、仏教では我々人間を欲望にとらわれた存在であるとみなしています。そのため、普段何も意識せず(心の修養を)怠りなまけていると、心が欲望に侵食されていきます。逆に(心の修養に)つとめ励んでいれば、余計な感情が心に起こらないので、乱れることがありません。 「心の修養」については、先月の繰り返しになってしまうので内容は省きますが、心を制御(コントロール)するための実践ぐらいに考えてください。 仏教の見方としては、「怠惰でなまける」ことにより得られるものはそれほどなく、「つとめ励む」ことによって心の安寧が得られるのです。それゆえ、「つとめ励む」ことが古くから重視されたのでしょう。 |
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11月の言葉
2022/10/31 18:17
11月の言葉

屋根を粗雑に葺いてある家には
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中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』より |
<解説>
今月も『法句経』から選びました。この文章自体は難しいものではありませんが、何を言わんとしているかはいまいち分かりづらいのではないでしょうか。この教えのキーポイントは最後の句の「情欲」だと思います。 情欲とは「貪り」とも訳されますが、ここでは「過剰な欲求」「激しい欲望」とも言い換えられると思います。仏典では「三毒」(さんどく)といって、人間の根源的な煩悩(欲望)を三つあげるのですが、この「情欲」とはそのうちの一つに数えられるものです。 そもそも、仏教では我々人間を欲望にとらわれた存在であるとみなしています。そのため普段何も意識せず「心の修養」を怠っていると、心が欲望に侵食されてくるということです。逆に「心の修養」に勤めていれば、心に余計な感情が起こらないので、乱れることもないのです。 では、「心の修養」とはどのようなことを指しているのでしょうか。ここでは明確にされていませんが、おそらく、心を制御(コントロール)するための瞑想や戒めの遵守などの実践を意味していると思われます。この「心の修養」とは、現在のお寺でみなさんも体験・経験できることなのです。 繰り返しになりますが、人は漫然と過ごしていたのでは貪りなどの煩悩に振り回されます。「心の修養」を行って、心乱れない状況を作り出し、穏やかな生活を送りたいものです。 |
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10月の言葉
2022/09/29 17:16
10月の言葉

実にこの世においては
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中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』より |
<解説>
『法句経』の中でも有名なことばの一つです。目にしたり、耳にしたりしたことがある方も多いかもしれません。人間は他人から不利益を被ってしまった場合、その人物へ不満を抱き怨んでしまいます。そして、この不利益が大きければ大きいほど、相手への怨みを募らせて報復行為へと走りがちです。個人レベルでも怨みを捨てることはなかなか難しいですが、個人から規模が大きくなって国家レベルともなると、さらに困難をともなうことが推察されます。 この教えは、まさに「言うは易し行うは難し」と言えるでしょう。 個人であれ国家であれ、悪事の行為者は、それに対する正当な報い(現代で言えば刑罰など)を当然ながら受けるべきです。しかし復讐心という怨みにより相手を極限にまで追い込むことは、それが報復の連鎖を生み、結果として、争いが止まなくなってしまいます。このことは過去の歴史からも明らかです。 個人的にはこの教えだけではなくて、害意ある行動を起こさせない、そして悪い行為をした場合にはその報いは必ず受けることも併せて説き示し、相手を正しい行動へ導いていく必要があると考えています。 いずれにせよ、本当の意味での平穏・平和の実現とは、この教えの意味をしっかりと理解したときなのではないでしょうか。 |
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9月の言葉
2022/08/31 14:36
9月の言葉

ものごとは心にもとづき、心を主とし
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中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』より |
<解説>
この教えでは、世界のものごとは、人々の心によって作り出されると説かれています。さらに続けて、清らかな心による行為であれば、その結果である福楽が行為者にもたらされ、それは影がその人のからだから離れないようにつき従うと説明されるのです。では、その反対に「汚れた心」による行為はどのように言われるのでしょうか。上記の教えの直前に説明がなされており、汚れた心による行為は、その結果である苦しみが自らについて回ると言います。 ここから見て取れるのは、ものごとや人の行為というものは、心の有り様によって変わってくるということです。 例えば、怒りや焦りが渦巻いているときには、普段なら気にも留めない他人の行為やものごとに対して、さらにイライラしてしまうことは誰にでも経験があるのではないでしょうか。そのイライラした心にまかせて何かをしてしまうと、自分にとって不快な結果を招きやすいものです。その逆で心穏やかなときであれば、他人に対しても配慮して行動がとれるので、結果として自分に望ましいことが起きやすいと言えるでしょう。 常に清らかな心を維持できるように心がけておく必要があることを気付かせてくれる教えです。 |
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8月の言葉
2022/07/27 17:16
8月の言葉

すべて悪しきことをなさず
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中村元訳『ブッダの真理のことば 感興のことば』より |
<解説>
ご存知かもしれませんが、日本の仏教諸宗派すべてが重視する経典は無いに等しいと言っても過言ではありません。しかし、それでも諸宗派に共通する教えは何かと問われれば、今月あげている『法句経(ダンマパダ)』の一句になろうかと思います。「悪いことをせず、善いことをして、心を悪に染めないで浄らかにする」という、非常にシンプルとも言える教えです。ここで「悪いこと」や「善いこと」とは何かが問題となりますが、紙幅の関係上、「善いこと」を説明しましょう。 在家・出家において程度の差こそあれ、仏教徒が守るべき基本的な戒めとして、「五戒(ごかい)」があります。その五つとは以下の通りです。 ⒈生きものを殺さないこと ⒉盗みをしないこと ⒊性に関して乱れないこと ⒋嘘をつかないこと ⒌酒を飲まないこと 戒めを守ることは、財産や人間関係、そして品性ある生活に役立つとされるばかりか、普段からの怒りや嫉妬などからも距離をとることができ、心穏やかな生活を送れると説かれます。 最近の報道でも、これら五戒から逸脱する行為がたびたび見受けられます。報道での事件に限らず、五戒を守れないことにより、さまざまな人生の場面で悪影響がでてくることは容易に想像がつくと思います。 いま改めて、生活の基本に五戒を据えてみてはいかがでしょうか。 |
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7月の言葉
2022/06/30 16:02
7月の言葉

完き人の教えには
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中村元訳『ブッダ最後の旅』より |
<解説>
今月1日付けで第7代貫主を拝命した善曉と申します。拙寺興隆のため尽力してまいりますので、何卒倍旧のご支援を賜りますようお願い申し上げます。さて、初めての「今月のことば」となりますが、釈尊の最晩年について描かれた『涅槃経』から選びました。 ある時、釈尊は病にかかってしまいます。その後、その病から回復しますが、釈尊に対して侍者の阿難が最後の説法を請います。「今月のことば」は、釈尊が阿難へ説かれた一部です。 釈尊は「自分は自らの教えを誰にでも、隠すことなく説いてきた」ということを語っています。つまり「教師の握り拳」とは、師匠が教えを握り拳の中に秘めて人に伝えないことを意味します。 当時の仏教を除いた諸宗教においては、特定の人間にしか教えを伝えない方が普通でした。インドでは教えの伝承が限定的・閉鎖的であるのが一般的であったにも拘わらず、釈尊はその常識を打ち破り、自らが覚ったこと(教え)を請う人々へ伝えてきたのです。 釈尊の「慈悲の心」により、その教えがインドから中国・韓国を経て日本にまで伝えられてきました。お寺の基本は、仏(ほとけ)の教えを説くところ・聞くところであると信じています。これからもこの基本から外れることなく取り組んで参りますので、よろしくお願いいたします。 |
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